月経トラブルと食事

○たくさん食べれば発育する? 
「さぁ、いっぱい食べろ、たくさん食べれば大きくなる」と私は子供のころ、父からよく言われました。それを真に受けた私は、食事の度に「これでもか!」とばかりに腹いっぱい詰め込みました。しかし、身長も体重も周囲の人と比べて低いし、それどころか1日おきに下痢をして衰弱していきました。中学3年間の記憶の中で最も鮮明なのは、「先生お腹が痛いので、トイレに行かせてください」と挙手していたことです。周囲に同情されたり虚弱に見られるのがいやだったので、オチャラケたキャラクターを自ら演じていたため、「また、長嶋かよ、ハハハ・・・」といった具合です。いつも陽気に振るまっていましたが、心中はせっぱ詰っていました。

○テレビや雑誌で報道されること
 「こんな症状には、これを食べれば改善される」などと、テレビや雑誌で盛んにいわれています。そして、視聴率が高い番組で放送されると翌日はその商品が売り切れる、という具合で簡単に洗脳される人が増えています。「これを食べると身体に良くないから、食べないほうが良い」という放送は全くされないのに、その逆のことばかりが放送されることは不自然極まりないですが、それは横に置いておき、果たしてそんなに単純に改善されるのでしょうか?
 こうしたテレビや雑誌で報道される内容は、「五臓六腑が丈夫で食べた物を全て消化・吸収して、身体中に行き渡らせることができる」ことが前提で成り立っています。しかし、月経トラブルをはじめ、色々な症状に悩まされている人は五臓六腑が弱いか、うまく働かなくて困ってい人たちです。五臓六腑がトラブルを抱えているからこそ、月経トラブルをはじめ様々な症状が出て困っているわけです。そんな人たちが特別なものを食べても、消化・吸収・散布がうまくいくとは限らず、簡単には改善されません。それどころか、テレビや雑誌を真に受けて許容量を超えて食べ過ぎれば、内臓に負担がかかって更に弱くなり、生命力が衰えます。「多少、胃がもたれているなぁ」程度でも、すでに消化・吸収がうまくいっていないため、内臓が弱り生命力が衰え、月経トラブルには悪影響です。それくらい身体はデリケートです。普通に考えると当然のことですが、テレビや雑誌で専門家に科学的根拠を並べて言われると惑わされます。

○これさえやれば不摂生しても良い?
 しつこく述べますが、月経トラブルをはじめ不快な症状は内臓の不活性で発生しますから、それを補う必要があります。そのためには、生活習慣全般を改善する必要があります。そうです、運動・飲食・睡眠です。「これさえやれば、こんなに良くなる」などということはありません。鍼灸施術を受けて、すぐに改善するケースも高い確率になっていますが、それをいうと「鍼灸を受けているから不摂生をしても良い」と考える人が出てくると良くないので、「生活習慣の改善と鍼灸を併行して考えて下さい」と言っています。「健康食品を摂ったら改善した。他にこれといったことをしていないから、健康食品の効果だと思う」という話を聞きますが、たまたま何かをきっかけに邪が出ていくことがあります。それを健康食品の効果と勘違いをしている人も大勢います。健康食品で改善するときは、もっとハッキリとした効果が出るものです。「他に思い当たることがないから・・・」などという程度ならば、健康食品の効果ではない可能性も大いにあるのです。

○朝食は無理にでも食べろ?
 「朝食は無理してでも食べなければならない」とは良く聞く話ですが、これも間違いです。正確に言えば「朝食べれば、とりあえずその日はのり切れる」です。仕事や勉強を夜遅くまでやっていて、夜遅く食べて遅寝する。おまけに運動不足状態が慢性化すれば、朝は食べたいはずがありません。なぜならば、胃腸が「これ以上負担をかけるのは止めてよ!」という信号を発しているからです。では、どうしたら良いのでしょうか?そうです、食べたくなっときに食べればよいのです。「それでは朝礼で倒れてしまう」ということでしたら、少量のビスケットをポケットに忍ばせておいて、空腹になったら少量を口に入れれば良いのです。そうすれば、血糖値も適度に上がりますから、倒れずに済むでしょう。

○朝礼で倒れる原因は?
 朝礼で倒れるのは、食べないことが原因ではありません。脾が弱っているからです。脾とは、栄養素を胃腸で消化吸収してエネルギーに変え、それを身体中に散布する機能を有しており、月経トラブルにおいても最大の影響力を有します。この機能が弱くなると、エネルギーが身体中に行き渡らないため、エネルギー不足になり倒れるのです。脾が健全ならば朝起きた時にはお腹がペコペコですし、もし、一食くらい抜かしても倒れるはずがありません。朝食べたくないのに無理に詰め込めば、より一層胃腸に負担がかかり、脾気が弱りますから逆効果です。朝食を無理に詰め込むことは、「朝礼で倒れなければ、内臓を多少悪くしても仕方ない」もっと言えば、「そのとき良ければ先のことは後回し」という考え方といえます。これでは月経トラブルも改善されません。現代の欧米流肉食栄養学では、長期的な発想がかけており「食べないから倒れる」と短期的な視点で単純な発想をし、我々も簡単に洗脳されてしまいます。では脾気の強化を図り、倒れないようにするためにはどうしたらよいでしょうか?そうです、運動・飲食・睡眠です。この3セットは脾気に直接関わりますから、月経トラブルにも直結します。今から数千年前の中国の文献には、「脾を養うには足を動かす運動が大切だ」と記されています。昔の人たちは分かっていたのでしょう。
 
○精がつくものを食べると病が治る?
 風邪などにかかったときもそうです。「たくさん食べて精をつければ治る」「食べたくないなら、食べたい物を無理にでも食べないと身体に良くない」などと言いますが、これも間違いです。江戸時代の養生法の中興の祖と思われる有名なお坊さんが書いた本を見ると、「たくさん食べて精がつくのは、元気で働けるときだけだ。内臓が丈夫なことが前提だ」「病気にかかったときに、最も戒めなければならないのは、”食物で精をつける”という誤った考えをなくすことだ」と言っています。なぜ”無理に食べると良くないか”というと、自然治癒力が病邪を治す方に働かずに、食べ物を消化する方に回ってしまうからです。自然治癒力は腎が主につかさどります。腎が働いて身体のメンテナンスをしようとしているときにエンジンを動かしていたら、メンテナンスはできません。食糧不足の時代に、栄養失調が原因で不調になっているならば、「食べて精をつける」という考え方も分からなくはありません。しかし、日常的に食べ過ぎ病になっている私たちには、当てはまるはずもありません(もちろん、無理なダイエットや短期間に体重が減少した人を除きます)。病気の時に食べたくないのは、自然治癒力を活性化するための本能なのです。その本能を無視して頭で考える欲望に従ったら、毎日の不摂生生活の延長になってしまいます。こうしたことは動物は分かっています。病気の動物に餌を与えようとしても、プイッとそっぽを向いてしまいます。動物は頭の欲望でモノを考えず、身体の本能に従って生きていますから、そのような誤ちはおかしません。

○食べて元気を回復する?
 「精神的に落ち込んでいる時は、うまいものを食べれば治る」もそうです。その時にはおいしい食物でごまかせるかもしれませんが、それは「ごまかし」にすぎません。精神は五臓六腑と連動していますから、五臓六腑が丈夫な人は落ち込みにくくなります。甘いものやアルコールなどを無理に押し込めば、内臓は弱くなりますから、精神的にも落ち込みやすくなります。その時に良くても、長期的に見たら逆なことをやっていることになります。もちろん、月経トラブルにも直結します。

○年をとって食べられなくなるのは本当に悪いことなのか?
 「年をとったら若い時のように食べられない」についても考えてみましょう。「若いときのように新陳代謝が良くないし、胃腸も丈夫でなくなるから」という理由を良く耳にしますが、これは半分正しくて半分間違っています。我々の一生を考えてみると、@赤ちゃん〜思春期以前:腎気旺盛体・・・腎は別名「先天の精」です。生まれたときに父母からもらった生命力を利用して生きます。この時期は、肺や胃腸が未発達ですから、小児喘息や胃腸虚弱の子供がみられます。A思春期:肝気旺盛体・・・肝は感情を主りますから、多感でナイーブな時期です。月経トラブルでは、激痛ストレス・イライラ型(肝うつ気滞型)の人が感情が高ぶりやすいのは、肝が感情を主どるからです。この時期は胃腸や肺も徐々に形成されてくるため、小児喘息や胃腸虚弱も沈静化してきます。その代わり、うつ・ノイローゼ・自律神経失調・不眠などの症状がみられがちです。B思春期以降〜熟年:脾(胃腸)気旺盛体・・・脾とは胃腸+膵臓+脾臓のようなものです。胃腸で消化吸収して、身体全体にエネルギーを行き渡らせる役目です。別名「後天の精」と呼びます。腎が生まれもって宿るエネルギー(先天の精)であることに対して、脾は食物から生産されるエネルギーを意味しますから、「後天の精」です。食欲が最も旺盛な時期です。C熟年以降〜高齢者:肺気旺盛体・・・これが最も認識されていない事実です。Bの食欲旺盛な時期(エネルギーを食物から摂っていた時期)から、徐々に肺を通して、大気から五大栄養素を摂る時期に変わります。ですから食欲が落ちて当然です。「(究極の高齢者である)仙人は霞を食らって生きる」といいますが、これは全てが架空の出来事というわけではありません。高齢者になったら空気の良い所を好むのも、大気から五大栄養素を摂取しようとするためです。高齢者になれば大なり小なり肺気旺盛体になるのですから、その分、食欲が落ちて当然です。元々、胃腸が丈夫で脾気旺盛傾向な人は、高齢になっても食欲が落ちない人もいますが、普通の人がそれらの人をまねして無理に食べると、脾を悪くして寿命を縮めることになります。現代では「食物からしかエネルギーを摂取できない」という誤った認識がはびこっていますから、「無理にでも食べさせなければ」と考えがちですが、それは逆効果ということです。こうしたことも、昔の人たちは知っていました。

○自分に都合の良い理由を探さない
 私をはじめ、人はとかく楽なことに飛びつく傾向にあります。運動・飲食・睡眠についても同様です。特に運動は苦痛が伴いますから、避けるための理由を探します。「会社まで距離があるから歩くだけで充分だ」「画面を見ながらする運動でもよい」「以前、運動したら膝が痛くなった」などと、運動しなくてもよい理由を懸命に探します。逆においしいものはたくさん食べたいですから、食べるために都合の良い理由を探してますし、夜更かししたい人は「遅くまで起きていても睡眠が充分ならば大丈夫」などと自分を納得させます。それらのうち、今回は食べ過ぎることに力点をおいて考えてみました。私は偉そうなことを言える立場ではありませんが、結論としては「たくさん食べれば元気が出る」は食糧不足時代の話であり、現代の食べ過ぎ病蔓延(まんえん)時代には当てはまらないということです。また、「迷ったときは食べない、食べるために都合の良い理由を探さない、腹八分目の実践」が大切です。月経トラブルでお悩みの皆さんも、かつての私のように食べ過ぎて悪化させているケースが多くみられます。ぜひとも腹八分目を実践してみてください。仕事の途中でお腹がすいたら、ポケットにおせんべいなどを忍ばせておいて、かじることができれば理想的です(トイレに行く振りをして席をはずしましょう)。運動してお腹がペコペコ→粗食をおいしく感じる→運動で疲れているから起きていられなくて早寝する・・・という日を1日でも増やして下さい。それだけでも、月経トラプルが軽減することも珍しくないのです。月経トラブルなどに人生をかき回されないために・・・。

(2008.11記)

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