〇現代社会は欲望に満ち溢れています。テレビやインターネットを見ても、性欲、食欲、金銭欲、運動不足欲・・・などきりがありません。この中で特に際立っていて、なおかつ我々が気づきにくいものに、食欲があります。
〇性欲に関しては”有害サイト”などと盛んに報道され、国も諮問委員会のようなものを立ち上げて対策に乗り出しました。これは、避けて通れないのかもしれません。しかし、食欲に関しては全く無頓着になっています。性欲と同等以上に、食欲を必要以上に増長させるテレビ番組こそ、私たちの健康にとって有害であることに気づくべきだと思います。
〇我々の欲望の中で、最も先に来るのが食欲です。動物は皆そうですが、私たちの身体は、食糧不足の中で生きていくことが前提にできてます。「ここのところ、2〜3日食べてないけど、目の前にある食料がおいしくなさそうだから、食べるのやめておこう」などと言っていたら、飢え死にしてしまいますから、食欲が最も強い欲望として我々の中に存在するわけです。食料が不足気味の時にはそれで良いのですが、”おいしいものが欲望の限り、食べたいだけ食べられる”現代では、食欲で自滅することになります。「金銭欲で自滅する」「性欲で自滅する」などという話は聞いたことはあると思いますが、実はそれ以上に「食欲で自滅している」人の方が多いと思います。
〇これは、私よりも何十歳も年上の人に聞いた話ですが、「我々の頃は、一汁一菜が当たり前だった。現代のように豪華な食物など目にしたこともなかった。しかし、それで充分に生きて来れた。そして、いま、世界一の長寿国を作っている高齢者は、皆、食糧不足の時代に少年時代〜青年時代を迎えた人たちだ。」とのことです。一汁一菜が良いとは言いません。しかし、一汁一菜を基本に、精のつくモノを少し加えて少なめで質素な食事にしたら、100点満点の食事になります。
〇去年、どこかの機関が「成人の5人に1人が糖尿病予備軍」との見解を正式に発表しました。糖尿病だけでも5人に1人ですから、他の生活習慣病予備軍も含めたら、相当の割合になるのではないでしょうか(多くの人がダブっている思いますが)。生活習慣病の中に、栄養失調が原因の病気はひとつもありません。昔は、栄養失調が原因で肺結核などになり(下図:脾≒胃腸が肺を養えない)、死亡する例が最も多かったのに比べて、現代では、栄養過剰で生活習慣病になっているわけですから、笑えない話です(ちなみに、現代の肺結核は、食べすぎや運動不足から脾を痛め、肺を養えなくなっていると思います。高齢者の場合は肺気旺盛体になるので、肺に負担がかかるという要素も一定関与します)。東洋医学的には、アトピー・小児喘息なども直接的には肺ですが、根っ子には脾や腎があります。

○万が一、特定の栄養素だけ不足しているとしても、それは食べる量が足りないわけではなく、「胃腸の消化吸収⇒肺を通じて身体全体にエネルギーを運ぶ」の機能が減退しているに他なりません。運動不足・肉食や甘い物の食べすぎ・遅寝などの生活習慣がそうさせているわけですから、いくら食べても特定の栄養素だけは補えるかもしれませんが、別の部分に不便な症状が出てくる可能性があります。不自然な栄養分の摂取でも述べましたが、自然の生態系の中に、ある特定の種類の生物だけを過剰に繁殖させているのと同じだからです。
〇これだけ食べ過ぎ病が蔓延しているにも関わらず、食べすぎをなくそうとする流れが出てこないのはなぜでしょうか?その原因は、欲望を否定したら人々に受け入れられない、という風潮があるからです。
これだけ、食べ過ぎ病が蔓延していたら、「あれも食べないほうが良い、これも食べないほうが良い」となるのが自然です。しかし、現代の健康法の大半は「あれも食べたほうがよい、これも食べたほうが良い」とするものばかりです。テレビではスイーツ、大食い、などがもてはやされています。旅番組などでは、必ず当地の名物料理がメインで扱われます。そうしないと、視聴率が上がらないそうです。視聴率が上がらないと広告収入が減りますから、「2008年は広告収入の減少によりテレビ局は軒並み減収」などという報道がされることになります(実際にされていますので、検索してみて下さい)。
〇御上(おかみ)も最悪の食事指導をしていると思います。名づけて、「欧米流大食(高カロリー)栄養学」です。御上(おかみ)の食事指導は「1日何十種類の食物を食べなければならない、何カロリー摂らなければならない、朝はお腹が減っていなくても無理矢理に詰め込まなければならない」などといったものです。どれも食べすぎを増長させるような教育ばかりがまかり通っています。朝起きたときに食べたくないのは、胃が「もう、これ以上いじめないでよ」といっているわけですから、「これでもか」と詰め込んだら悲鳴をあげてしまいます。仕事で疲れきって、うつっぽくなっている人に「これでもか」と仕事を押しつけたら、どうなるでしょうか?朝、食べられなかったら、お煎餅(せんべい)でもポケットに忍ばせておいて、休み時間にお腹がすいたら食べられるようにするのが最善策だと思います。古人曰く「腹が減ってから食べ、いっぱいになる前にやめ、足を動かす運動をして、早寝する」
〇健康食品を売ろうとする会社は、「栄養不足で病気になっているから、このサプリメントを摂らなければならない」などと宣伝します。つまり、サプリメントを売るための宣伝です。しかし、素直な人は宣伝文句を真っ向から受け止めてしまいますから、だまされてしまいます。
〇これはテレビ局、御上(おかみ)、健康食品会社などだけが悪いとも言い切れないところがあります。なぜならば、食欲を否定する番組や食事指導を、我々視聴者(消費者・国民)が受け入れないからです。私を含めた我々の本性は「あれも食べたい、これも食べたい、食欲を否定する理屈など受け入れたくない」という欲望第一主義なのです。
〇我々大人はこのように欲望第一主義を選択しておきながら、子供には「有害サイト」などといってみたところで、説得力を持つのでしょうか?まず、我々が自分自身を省みて、欲望第一主義を正すところから始めなければならないのではないでしょうか?
〇私はかつては放蕩無頼(ほうとうぶらい)でメチャクチャな生活をしていました。自分の出世欲のために、昼も夜もなく働き、そのストレスで食べすぎは日常化し、たまには悪い遊びをして、眠い目をこすって仕事をするときにはブラックコーヒーを何杯も飲んでいました。朝のすきっ腹にブラックコーヒーを入れたとき、胃が「キュー」となるのが良い、などと身体のことなどは少しも思いやらない生活を年単位で続けました。その結果、うつ病となり、仕事を途中で投げ出し退職したわけです。職場の人たちからみたら、たいへんに迷惑な存在だったと思います。私は虚弱だったため、うつ病にかかりましたが、もし丈夫だったら、その何十年後かに生活習慣病にかかっていたと思います。私のような極端な愚か者はいないと思いますが、それにしても、現代社会のあり方が、かつての私のような人を増長する方向に傾いているのではないかと思います。
〇性欲、食欲、金銭欲、運動不足欲、出世欲、自己顕示欲(私には自己顕示欲が多すぎると思います)・・・などの欲望は身を滅ぼします。しかし、ここまで現代社会が欲望増長社会になると、自分自身の努力では欲望を跳ね除けられないこともあると思います。素直な人ほど、周りの影響を受けやすいものです。では、どうしたら良いのか、と考えても良い案が浮かびません。いつも食欲に負けて食べ過ぎている私ですから、そんなことを考える資格はないのかもしれません。そんなことを考えているうちに、今日も眠れなくなりそうです。私よりも賢い皆さんには、どうしたら今後良い社会になっていくのかを考えていただきたいと思います。どうか良い社会に変えていってください。
(2009.06記)
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