〇我々は物心(ものごころ)ついた頃から「科学的に証明できることは正しい、そうでないことはオカルト」という教育を受けている。医学に関していえば、わが国は中国や韓国とは違い、東洋的なものを医学とは認めていないので、華岡青洲の外科手術の例などを持ち出して、「現代医学は正しい。東洋医学は古臭くて役に立たない」という教育を受けながら育ってきた。
〇我々は大人になってからも、メディアなどを通じて日常的に洗脳されている。医療をテーマにしたニュースなどをみると、「〜が科学的に証明された」などと報道される。これは逆にいえば、「科学的に証明できない限り、オカルトかもしれないぞ」といわれているのと同じだ。つまり、ことあるごとに「科学的こそが正しい」とする洗脳を受けているのだ。西洋科学からの洗脳が解けた私からみれば、「そんな事とっくの昔に分かっているではないか、何を今さら言っているのだ」くらいにしか思わないこともあるが、そうでない人からみると、「証明できた、すごい!」となる。
〇私は頭が悪いので、科学的な研究などできない。目の前にいる患者さんの症状をすぐにでも改善しなければならないわけだから、科学的か否かなどは考えている余裕はない。とにかく効けば私の勝ちだし、効かなければ私の負けだ。科学的証明をしている暇があったら、その分、効かせる技術を磨かなくてはならない。
〇物心ついたときから西洋科学的なことが正しいと教えられ、義務教育で西洋科学的なことを学び、ニュースを通じて西洋科学的発想こそは正しいといわれ、テレビ番組を通じて「あなたはこんな病気ではないか(西洋科学的病名)」とやられれば、洗脳されない人はいない。教育になっているのだから当然だ。戦前の教育の中で、「天皇を頂点とするのはおかしい。象徴で良いのではないか」と考える人は皆無であったのと同じだ。この教育によって叩き込まれた洗脳を解くには、同じくらいの年数かかって東洋的な洗脳を受けなければならないのだろう。そう考えると、私くらい東洋的なことに洗脳されていて、ようやく東西の真ん中の場所から両方を見られるような気がする(自分を正当化して申し訳ない)。
〇偉そうなことを言っている私たち鍼灸師も例外ではない。鍼灸師会で行っている蘇生法は西洋科学的蘇生法のみだ。東洋的蘇生法も存在するが、それが存在することすら知らない人も多く、「東洋的蘇生法で命を救おう」と考えている人は皆無に等しい。西洋科学的思考を土台にして上っ面(うわっつら)だけ東洋的なものにして、「東洋医学」とうたっている治療院がほとんどだ。我々鍼灸師自身がそうなのだから、患者さんのことを偉そうに批判できる立場ではない。
〇人の生命力をいじくっていると、「科学的根拠がいかに器の小さい見方か」ということに日常的に遭遇する。例えば、”不自然に排卵や月経をコントロールする療法”終了と同時に、腹部とは別の場所にアマリモノが見つかった患者さんがいる。「科学的には、”不自然に排卵や月経をコントロールする療法”と別のアマリモノは関係がない」といわれているそうだが、直前に異常なかったものが、療法を3ヶ月行った頃に検査したらアマリモノができていたのであるから、関係があると考えるのが自然だろう。私は同様の例を複数知っている。
〇「子宮頸がん妊婦に多発、発症ピーク若年化」という報道もされているが、これなども報道や科学的発想を鵜呑みにするのではなく、不妊治療の内容なども含めて自分の頭で深く考える必要があるのではないか、と思う。
〇西洋科学的手法はすばらしいと思う。私自身も「正常な体内の生態系を犠牲にしてでも操作しなければならない」という場面に遭遇したら、迷わずお任せするだろう。だから、西洋科学的発想を全て否定しているわけではない。あまりにもそっち方向に洗脳されてしまって、「普通のことを普通に考えられない」現象が起きていることが問題だと主張しているのだ。偏らない柔軟な思考が大切なことは、身体のことについてもいえると思う。
追記:熱心な方から、「西洋科学的〜というが、じゃあ、どうやって東洋的なものを勉強したら良いのか?」とのご質問を頂きました。質問はごもっともだと思います。確かに書店においてあるものを見ると、”治療院宣伝本”または”西洋東洋ゴッチャ本”もしくは”東洋オカルト本””東洋を利用したニセ健康法の本”ばかりです。そこで、勉強する意欲がある方には、東洋医学概論をお勧めします。この本は、鍼灸専門学校に入学したばかりの学生の教科書ですので、比較的理解しやすいと思います。通り一遍のことが書かれている本ですが、最も良い点は、間違ったことが書かれていないことです。書店の患者さん向けの本は、”奇をてらう”ような内容や、”東西ゴッチャのきれい事の内容”が多く、それらを東洋医学の教科書としてしまったら、間違った知識が植えつけられてしまいます。そうでなくても、健康食品などの商売健康法の宣伝を真に受けて、間違った東洋医学の知識を得ている人が多いわけですから・・・。東洋医学概論は突っ込んだ内容ではありませんが、間違ったことは書かれていないため、入門書としては優れていると思います。値段が高いのが難点ですが、オークションなどで安く入手できるかもしれません。患者さんに無理に押し付けるつもりはありません。「興味があるので勉強したい」といわれる方もお来しになるので、紹介してみました。
(2010.10記)
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