肝血虚(虚弱体質 型)の生理前症候群

生理前症候群は教科書的には実証ですので、イライラ型のような症状が出ることとされています。しかし、日本人は大陸(中国・韓国)の一般的レベルに比べて生命力が弱いため、多くは虚弱体質としての症状が出ます。よって、教科書どおりの漢方や鍼灸を施しても、改善しない場合も多く見られます。肝は異常亢進しやすいため、実証 も 虚証も似たような症状が出ますが、本質は逆です。それでは何故、排卵〜生理前に体調不良に陥るのでしょうか?

その時期は、受精から妊娠に至らせる目的で生命力(エンジン)がフル稼働するため、エンジンオイル(≠ガソリン)を必要以上に消耗し、円滑に機能しなくなることが原因です。具体的な症状について検証してみましょう。

※以下の症状が、全部当てはまる訳ではありません。

1排卵〜月経前はのぼせる
エンジンがフル稼働するため、血分(=生命力維持に必要な潤い、車に例えるとオイル)が不足し、肝火を消すことができなくなり、身体の表面(または上部)ばかりが火照(ほて)ります。肝に病があるときにはそこまでで済みますが、肝→心(しん)に移行するとパニック症状が発症する場合もあります。

2夜に寝汗をかく
寝汗のことを盗汗(とうかん)といいます。これも1と同様に、陰分(=生命力維持に必要な潤い=車に例えるとオイル)の消耗現象です(腎陰虚)。

3怒りっぽくなる
血分(≒陰分)が充分なときは、生命力維持に必要な心身の潤い(=潤滑油)が足りているため、肝火を抑えることが可能です。しかし、不足すると潤滑油でエンジンを潤せなくなくなるため、肝がスムーズに回らなくなります。肝がスムーズに回らない→更にオイルの不足→更にスムーズに回らない→・・・と悪循環に陥り、どうしようもなくなります。東洋医学では西洋科学的発想のように「肉体は肉体、精神は精神」と別々には分けません。これを一元論といいます。

4鬱っぽくなる
実証の人は生命力が強いため、外に発散する傾向が見られます(ヒステリーなど)。しかし、虚証の人は、そこまでのパワーがないため、内に篭りやすくなります。実際には、両方が合併して出る場合も散見されます。

5不眠傾向
生命力維持に必要な潤いが充分な人は、心(こころ)も潤っているため、安心して眠ることができます。潤いが不足すると、睡眠もぐっすりとはいきません。

6感情が高ぶる
感情の高ぶりは肝の異常亢進の症状です。人間関係などに支障を来たしやすくなります。

7舌の両側に歯型がついている
肝が高ぶると脾(≒胃腸)を攻撃するため(=相剋現象)、消化機能を弱くします。消化機能が弱いと不要物が体内に停滞しやすくなる(新陳代謝の低下)ため、舌が腫れぼったくなります。その結果、歯が舌に当たるので、歯型がつきやすくなります(肝脾血虚)。

8血の気が引く
肝の蔵血機能の低下です。蔵血機能とは、血の全体量は足りていても、必要な部分に供給できない状態をいいます。月経の時に貧血気味になる方の場合、単なる貧血ではなく、当該症状が出ている可能性があります。

9午前中は特に動けない
肝が旺盛に働く時間帯は午前中です。旺気するということは、逆にいえば負担がかかる、ということです。午後になると心(しん)や脾に移行するため、少し楽になります。逆に午後に眠くなる場合は、気虚(肺脾気虚≒胃腸型)の症状が出ていることになります。つまり、朝は睡眠によりエネルギーが満たされていますが、時間が経つとエネルギーが使われるため、エネルギー不足になる訳です。よって、夕方になるほど疲れるわけです。午後に眠くなるのは、消化吸収にエネルギーを取られたり、脾が旺気するためですので、やはり気虚(肺脾気虚≒胃腸型)の症状を疑う必要があります。

10月経が起こると調子が良い
月経が起これば、エネルギーの異常亢進状態もなくなるため、調子が良くなります。逆に月経後半以降に調子を崩す方は、気虚も混ざっていることになります(月経血とともにエネルギーも漏れ出てしまう=月経後症候群)。

11排卵〜月経前に脈の異常が出る
心(しん)は肝の子臓ですから、肝に異常が出ると心に波及することがあります。脈が速くなる人、遅くなる人、弱くなる人、異常亢進する人など様々です。

12しゃべると疲れる
しゃべることはエネルギーを消耗しますので、疲れます。日本人は大陸(中国・韓国)の人ほど大きな声で話さない傾向があるのは、そのためです。しかし、異常亢進(無理に力を出している状態)になると、疲れながらもしゃべるのをやめられなくなることもありますので、声が大きければ必ずしも生命力が旺盛な訳ではありません。

13寝ていると更に悪化する
肝は気の通りを司りますので、動かないと益々通りが悪くなります。生理前の症状→動きたくない→生理前の症状が益々悪化→益々動きたくない→・・・と悪循環に陥ります。できる限り動いた方が改善するでしょう。ただし、最悪の場合は歩くことさえできなくなりますので、鍼灸などで人為的に気を通すことも必要でしょう。

東洋医学は、無理矢理に症状を抑える訳ではありません。生命力を活性化することにより、活き活きと幸せに生活することを目指します。よって、「婦人症状は婦人症状、整形外科的症状は整形外科的症状」と縦割りで全く別々に分かれている訳ではありません。そのため、奏功した場合「婦人症状の施術を受けたのに、同時に別の症状まで改善した」とするご連絡を頂くこともあります。東洋医学が「全体治療」と称される所以(ゆえん)でしょう。
(2012.06記)

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