不妊−生理トラブル専門鍼灸-低回数による効果を追求

 東洋医学は「ホルモンが・・・」などの西洋科学的治療の考え方とは根本的に違います。全く違う方向からアプローチするので、西洋的手法で改善しなかった人にも奏功することがあります。もし、東洋的手法が西洋的手法と混ぜこぜの内容の治療だったら、単なる中途半端な気休め的手法になってしまいます。東洋の専門家と西洋の専門家が全く違う方向からアプローチすることにより、片方で救われなかった人がもう片方で救われる・・・それが、本来の東西融合です。こうした考え方は、生理不順・無月経や不妊にも当てはまります。

T 腎虚
「腎は精を蔵し、妊孕力(にんようりょく)をもたらす」といわれています。父母から受け継いだ先天の精は、腎に内蔵されています。この精は、飲食物からつくられる後天の精によって、常に補充されています。精は生命力と成長・生殖力の根源です。この精が腎により活性化したものが妊孕力(にんようりょく)です。
 人間は、腎の働きが活発になるにつれて成長し、生殖能力を生み出します。腎精が充実していれば、元気(基礎活力)も盛んで、活動的であり、不調にも陥りにくく、また、根気がいる細かい作業をやりぬきとおす力もわいて来ます。そこで、「作強の官、技巧これより出づ」といわれています。
 腎気が衰えると元気がなくなり、活動が低下し、身体がほてったり冷えたりします。また、生殖能力も低下して、不調や不妊などに陥りやすく、改善しにくくなり、さまざまな老化現象があらわれます。
 腎には「蔵精を主る」「水液代謝を主る」「生殖・成長発育を主る」「納気を主る」という生理機能があり、生命力の根源である原気をもたらします。腎の機能が低下すると、精の外泄・水液代謝の失調・発育の遅れ・生殖能力の低下・呼吸が浅い、などが起こります。
 腎の機能低下の原因には、両親から受け継ぐ先天の気の不足があり(ただし、後天的な機能をアップすることにより補えます)、また、過度の房事(性生活)・栄養の吸収不良・慢性症状が長びく、などがあります。腎は「志」を蔵 すると同時に、脳・髄・骨を養っているので、腎が疲れると、物忘れ・腰のトラブル・下肢に力が入らない、などの 症状があらわれます。さらに腎は全身の水液代謝を主っているので、腎が疲れると尿の出が悪くなってむくみがでたり、逆にトイレが近くなったり、夜間尿が発生したりします。また、腎には気を下げる作用があるので、腎が虚すと気が上に偏り、下に不足するという症状(上熱下寒など)が発生します。このほか、腎は耳・髪・歯・二陰(大便口・ 小便口)と生理的関係があるの(参考:五行色体表一番右の縦列)で、腎が虚すと、これらにトラブルが発生し、治療を必要とすることもあります。腎の代表的なトラブルには、次のようなものがあります。

(1)腎精の不足
 腎精が不足すると、性器の成熟及び性機能にトラブルがあらわれたり、老化が早まるなどの症状があらわれます。 腎精の不足によるトラブルは、それが起こる時期の違いにより、あらわれ方が異なります。子供の頃の症状としては、発育に影響して五遅(立遅、行遅、髪遅、語遅、歯遅)、五軟(頭軟、項軟、手足軟、肌軟、口軟)が起こり、 思春期では性器の成熟に影響し、男性では精液の生成が遅れたり、女性では初経が遅れたり乳房の発達に影響します 。壮年期では性機能に影響します。また老年期では老化が早まり、腰や膝の軟弱化・歩行トラブル・耳のトラブル・ 眼のトラブルなどが早くから起こるようになり、治療を必要とすることもあります。
 また、精は髄を生じ、髄は骨の中にあり、骨は髄により栄養されています。脳髄・脊髄の髄もこの精から生じているため、精が不足するとこれらにも影響が及ぶことがあります。主症は、発育の遅れ・性欲減退・早老化です。また 、耳トラブル・めまい・歯の動揺・物忘れなどの症状を伴いやすくなります。

(2)腎陰虚
 腎の陰液が不足した状態で、いわゆる”潤い不足によるほてりタイプ”です。多くの場合は陰虚により生じる虚火 (ほてり・のぼせ)の症状を伴います。腎陰は身体を形成するだけでなく、生殖が機能する場を形成しています。腎陰が不足すると、子宮内の津液分泌が不足して乾いて渋り、男性側から腎精が侵入できなくなったり、移動がスムーズ にいかなくなったりします。また、虚が長く強くなったりすると、生殖機能の働く場や生殖臓器そのものが虚して月経が来なくなったり、無排卵や不妊・生理不順になるケースもあります。そのほか、腎陰の不足が悪化すると、陰虚火旺し、衝任(気血の流れ)に熱が発生すると改善の妨げになることもあります。
 原因としては、先天の気の不足(ただし、後天的な機能をアップすることにより補えます)・房事(性生活)過多・過度の出血(月経血が出過ぎる)・驚きや恐怖などがあります。主症は、腰や膝の軟弱化・めまい・耳のトラブル・五心煩熱(掌・足の裏・胸のほてり)などが挙げられます(参考:五行色体表)。腎陰は全身の臓腑・組織などの陰液の根源であり、従って腎陰が虚すと、多くの臓腑・組織の陰液の不足が起こり、腎が単独で虚するよりは、他の臓腑に波及することも多くみられます。不眠・多夢・ノドの乾き・便秘などを伴いやすく、五心 煩熱(掌・足の裏・胸のほてり)・盗汗(寝汗)・午後の潮熱(午後に決まって起こる微熱)など陰虚の症状を伴うことも あります。
(ア)腎陰虚の特徴
  月経周期は短め〜長めまで様々。量は少なめ。色は紅。
(イ)腎陰虚の症状
 足腰がだるい、めまい、頭痛、耳鳴り、五心煩熱(掌・足の裏・胸のほてり)、踵が痛い・・・など
(ウ)その他
 津液不足のため、子宮も乾いて渋り、受精・着床しにくい。肝腎陰虚になると、イライラ型の症状があらわれる。

(3)腎陽虚B冷え性 型
命門火衰ともいわれています。温煦(おんく)機能の低下・気化機能の低下があらわれ、精神不振・性機能の減退・生育能力の低下・不妊などがみられることがあります。原因としては、腎気虚・房事(性生活)過多・先天の気の不足(ただし 、後天的な機能をアップすることにより補えます)などがあり、他の臓の陽虚から波及するもの、腎気虚や腎精の不足から進行して起こるものがあります。主症は、腰や膝の軟弱化と冷え・四肢の冷え・寒がりです(参考:五行色体表)。衝気の働きが排卵時や月経の前に旺盛にならず、無排卵・黄体機能の虚・無月経などが生じることもあります。月経時に寒邪が子宮に入ったり、子宮を温煦(おんく)できないと、子宮出入口が 寒凝して開かなくなるため、腎精が子宮に侵入しにくくなります。温煦(おんく)機能の低下により、全身性の冷えが 現れ、脾(≒胃腸)の運化機能が低下すると消化が悪くなり、未消化物を下痢するようになることもあります。気化機 能が低下すると、津液代謝トラブルが生じ、むくみ・尿や膀胱系統、生理不順などのトラブルが起こることもあります。
(ア)腎陽虚の特徴
   月経周期は長めで、量が少なく色は淡白。過少・稀発・無月経などの場合もある。
(イ)腎陽虚の症状
   顔色悪い、下半身がもろい、性欲減退、夜間尿(頻尿傾向)、舌の色は淡白で苔状の付着物はうすく、脈は沈みがち
(ウ)その他
  温める機能(陽)が不足(虚)するため、身体を温煦できず、子宮も温めることができない。脾の機能(飲食物からエネルギーをつくる)も弱くなるため、血をつくることができず、月経血もうすい。腎の子は肝であるため、親の腎に力がないと肝の力も弱体化するため、肝が上昇できず、無排卵などになったり、ダラダラと出血したり、性欲減退が起こる(参考:メカニズム)。腎の固摂(固めて出さないようにする作用)が弱るため、頻尿や夜間尿になる。生命力の源である下半身ももろくなる(腎は生命力根っこ)。冷秘による便秘になる場合もある。血が不足気味のため、舌も赤くなく、淡い。脈は細く沈みがち。

U 肝の不安定
肝の主な生理機能は、「疏泄を主る」ことと、「蔵血を主る」ことです。肝が不安定になり疏泄が悪くなると、気機 (≒気の流れ)の調節・脾胃の運化機能(≒新陳代謝)の調節・情動の調節、などにトラブルがあらわれ、蔵血が悪くな ると、とくに肝の支配する目や筋に症状が発生します。目としては、視力の問題や疲れ目などがあり、筋の異常とし ては筋の引きつれ(例えば顔)・萎縮などがあります。また、生理不順などの月経トラブルとしてもあらわれます。
 肝不安定の主な原因としては、「七情」のなかの「怒」という感情です(参考:五行色体表一番左側の縦列)。古典には、「怒は肝を傷る」として、怒りすぎると肝不安定を引き起こすことを説いてい ます。また、冷静な判断力が失われ、怒りやすくなったり、びくびくしたりするようになることもあります。
〇肝気の欝滞Aイライラ型
 これは肝の疏泄機能が失調して起こります。いわゆる気の流れの障害です。精神的なストレスを受けたり、長期にわたって気分がふさいでいると起こりやすくなります。気機が失調して気欝や気滞になるので、これがさらに精神状態に影響して、悪循環を形成しやすくなります。肝不安定のうちの実証です。気欝や気滞の起こる部位の違いによっ て、様々なことなった症状があらわれます。全身症状としては、精神抑鬱・怒りっぽい・胸悶・胸脇苦満などであり ます。肝気が鬱結して気血の流れが悪くなることにより、子宮中の気血の流れがスムーズでなくなったり、排卵期や月経前になっても衝気旺盛にならなくなると無排卵・卵巣トラブル・月経が遅れる・不妊・生理不順などになります。足の蕨陰肝経と衝脈・任脈(いずれも気の流れ)とは、密接な関係にあり、肝気の欝滞により気のトラブルが血に及び、衝任二脈が失調すると、月経や子宮に波及するということです。また、乳房は足の蕨陰肝経の支脈が流注しているので、乳房部に気滞による脹痛があわられやすくなります。気欝と痰(体内の余計な湿)が咽喉部に結すると、咽喉の閉塞感( 梅核気)が起こり、頚部に結すると頚部の腫塊を引き起こします。
(ア)肝気うっ滞の特徴
 生理前に乳房・下腹部の痛みが生じやすい。血に塊を含む場合がある。生理前は不眠傾向になる。
(イ)肝気うっ滞の症状
 精神抑うつ、イライラ、易怒、胸や脇(肋骨の辺り)の違和感。舌は先が赤く、脈はピンと張った弦のよう。
(ウ)その他
 肝気うっ滞すると、気血の流れが滞るため、精子・卵子の移動も滞るため、受精や着床がスムーズに行かない。

V脾虚
脾(≒胃腸)の主な生理機能は、「運化を主る」「昇清」「統血を主る」です。したがって、脾の機能が低下すると、 飲食物の消化吸収・水分代謝・気血の生成・血の固摂など多方面にわたって影響がでます。また、腎気の不足を補うのも脾の働きであるため、脾機能を高めることは必須です。脾は四肢・肌肉・唇・口と生理的関係があるため(参考 :五行色体表真ん中「胃腸」の縦列)、脾が虚すと、これらにトラブルがあらわれます 。
脾虚の原因には、第一に「思い煩う」ことによる内傷があります。外因としては、湿(湿度が高い環境)があげられます。また、飲食不摂生や運動不足による内湿(体内の余分な水分を捌けない)の発生があります。
(1)脾気虚@胃腸 型
消化吸収機能にトラブルがあらわれます。多くの場合は胃気虚の症状を伴います。これを脾胃虚弱といいます。飲食の不摂生・精神や情動の失調・労倦(働きすぎや運動不足)などにより起こりますが、その他の臓腑の虚や実が脾胃に影響することもあります。主症は、食欲不振・軟便・便の回数が多い・便秘・食後の膨満感であり、気虚による症状 が伴います。脾気虚により運化機能が低下すると、気血の生成が悪くなり、消化不良となり、体がだるくなり、肌肉 が衰えて痩せます。子宮にもエネルギーが行き渡らずに、不妊の改善とは逆方向へ行ってしまいます。また、胃・小 腸・大腸が順調に働かなくなり、ガスがたまって腹がはり、腹鳴がなります。水湿の運化が悪くなると、体内に水液が停滞して湿・痰・飲などのアマリモノがたまり、デキモノができたりします。昇清が悪くなると、内臓が下に下がることがあります。また、統血機能低下が起こると、排卵日前後の出血や月経後半のダラダラ出血が止まらない、生理不順などの症状が見られることもあります。
(ア)脾気虚の特徴
 飲食からエネルギーを生産→子宮を養う・・・の機能が衰えることによる。後天の精(脾)は先天の精(腎)を補っているため、脾が虚すと、腎もスムーズに働かなくなる。
(イ)脾気虚の症状
 湿度が高いと電車で気分が悪くなる、消化吸収がよくない、冷たいもので胃腸に違和感、秋にだるい、膝が痛い・違和感など。舌は淡い場合が多く、苔はべっとり。舌の両側に歯の痕がある。
(ウ)その他
 このタイプは、足を使う運動(苦痛を伴う)によって最も改善しやすい。足を使う運動は、食事・睡眠と並んで養生の基本中の基本。しかも、鍼と違って安上がり。せっかく立派な生命力を持ちながら、それを眠らせておくのは、お金をドブに捨てるのと同じか、それ以上の損失。本当に「もったいない」の一言に尽きる。

(2)痰湿
飲食物を脾(≒胃腸)が消化し、その消化物を全身に行き渡らせる・・・機能が低下すると、余計なアマリモノとなって身体中にたまります。つまり、湿→痰となります。ただし、この症状にかかる方は、胃腸障害を伴わないことも多い。痰湿が発生すると、気血の流れがスムーズでなくなり、子宮の津液が不足して潤い不足 となり、腎精が侵入できなくなったり、子宮自体を潤せなくなります。また、衝任の気の働きが滞り、無排卵や卵巣トラブル・生理不順にもなりやすくなります。
特徴としては、雨の日や湿度が高い日に不調、余計なお肉が気になる、顔色がさえない、めまい、動悸、吐き気がすることがある、胸が悶々として口が苦い、などです(全てが起こることは稀です)。
痰湿は衝任の働きを阻害して、排卵トラブルや卵巣トラブルを起こしたり、男性側からの腎精の侵入を拒んだりします。また、痰湿は子宮とその周囲の経脈の流れをも阻害するので、月経周期が延長したり、月経量が減少することも あります。痰湿が下にいくと、帯下が多くなり、粘ちょうになります。痰湿が気血の流れを阻害するので顔色が優れません。痰湿が上・中焦に阻滞するとめまいや動悸があります。

(腎・肝・脾の養生法)
月経トラブルと同様です。効果をあげるためには、運動・早寝・正しい飲食が大切です。色々な治療などを試すのも結構ですが 、効果を期待するには正しい生活をおくることが前提です。マスメディアや商売健康法に振り回されず、冷静なご判断を下されることが望まれます。そして、本当の意味で心身ともに健康になられることが、不妊の改善に近づくのです。

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