無月経(東洋医学で原因 別に考える)-即効性を目指す鍼灸

〇「月経が起こらない」といっても、その原因・メカニズムは個々人によって全く違います。場合によっては全く逆ということも珍しくありません。それは@実証とA虚証(虚弱体質)の違いです。つまり、原因として@(実証)気血(エネルギー)は充分にあっても、それが詰まって出て来ない場合と、A(虚証)気血(エネルギー)が不足していて出すだけの量がない場合、があります。@実証の場合は、気血の詰まりを取ると、それに伴って月経血も流れ出てきます。A虚証の場合は気も血も不足しているので、それらが生産されるように促します。

原因による分類・カラクリ
〇(実証)・・・生活するためのエネルギー(生命力の元)を生産できているが、有効に使えないタイプ
月経トラブル共通の基本的3タイプの中では、Aイライラ型に該当します。多くは気や血の滞りから発症します。気や血は生産されていても、気の流れが滞ると血も流れ出てきません。身体の中にうっ積して悶々としますから、ストレス・イライラや怒り・鬱といった症状がみられます。悶々・イライラ・鬱などの精神神経症状が高じて、寝たきりにはなるのはこのタイプに多いです。このような症状を鍼灸で施術するときは、”詰まっている管を鍼を用いて通してあげる”ようなイメージで刺激を加えることにより、月経が来るように仕向けます。気血は生産されており、茶碗からこぼれたいのにフタが邪魔で、こぼれようにもこぼれられない状態で充満しているところに、フタをとってやる・・・といったイメージでも良いでしょう。鍼施術で即効性があるのはこのタイプです。

〇(虚証)・・・生活するためのエネルギー(生命力の元)を生産できてないタイプ。俗に言う虚弱体質のこと。
月経トラブル共通の基本的3タイプの中では、B冷え性 型または心脾両虚型に該当します。このタイプは気が少なく、血も充分に生産されないことから発症します。中には精神力も弱く、身に降りかかる火の粉を払うのも大変な人もいます。このタイプは、悶々・イライラなどの精神神経症状が高じて寝たきりにはなることはありません。しかし、このタイプでも丹念に施術すれば、月経が来る可能性は高いです。しかし、「何でもかんでも月経が来れば良い」などという乱暴な方法をとると、「月経は来たけれど、身体の調子は良くない」などといったことにもなりかねません。月経は身体が気や血を生産して、その気血がある一定の量まで達すると、身体の外に出そうとします。そのため、極端に気血の生産能力が低下したときには、月経による気血の漏出(生命力の低下)を防ぐため、身体の防衛反応が働いて月経を来ないようにしているわけです。
 特殊要因(過激なダイエット・拒食症・過度な運動による一時的な栄養失調状態など)が原因である方は、B冷え性 型には当てはまらない場合も多いです。人為的な栄養失調状態になっているわけですから、気血が生産できず、月経血も不足するために発症します。つまり、『出て行くエネルギー>生産されるエネルギー』です。まずは、特殊要因を取り除くことが先決です。

原因による分類・カラクリ2
〇(実証について)
エネルギーは充分に生産されており、すぐにでも月経を起こさせたいのに、気血が詰まっていて月経が来ない場合、イライラ・悶々・ヒステリー・鬱などの精神神経症状が伴います。このタイプは生理前に全身倦怠感が伴うのに比べ、虚証タイプは生理中〜後半に全身倦怠感を伴うのが特徴です。要するに全く逆です。実証タイプの場合、月経が来ればスッキリします。このタイプの人は肉食過多になっている場合も多く、肉をやめて魚や大豆に替えると改善することも珍しくありません。肉は気の通りを悪くし、不要物を体内にためます。そのため、日本人は魚や大豆にタンパク源を求めていたわけです(殺生を禁止するとした宗教的要因も大きいですが・・・)。

〇(虚証について)
「生理が来るとだるくて仕方がない」という経験をした人は多いと思います。この「だるさ」はエネルギーの漏出から来ているのです。つまり、月経により血が漏出し、一時的に生命力が低下したことによるものです。この場合は「その後の脾力(≒胃腸の力)による食べ物からの栄気を取り入れることにより、月経による一時的な生命力の低下を補うことができる」と身体が判断して月経を来させたわけです。
「月経の時に風邪を引いたようになる」という現象も同じです。月経血とともにエネルギーを体外に排出すると、脾腎(中・下焦)の力が一時的に虚になります(生命力の減退)。その結果、邪気が項頸部(うなじ〜首の辺り)を通じて身体の中に入ってくるスキが生まれるわけです。正気×邪気の力関係において、正気がしっかりしている時は邪気が責めて来られませんが、正気が弱ると邪気が侵入してくるわけです。つまり、月経期間中の生命力の減退を物語っているわけです。こうしたことは、約1800年前の中国の文献に出てきます。昔の人は身体内部のことを知り尽くしていたようです。
先天的要因・精神的要因・拒食・ダイエット・運動しすぎ などで生命力が著しく低下して「月経による一時的な生命力の低下を補うことができない」と身体が判断したら、身体の防衛反応が機能して、身体を守るために月経を来なくするわけです。それが長びけば、無月経になります。このような症状を鍼灸で施術するときは、灸を中心として身体全体の生命力が高まるようにし、その結果として月経が来るように持っていきます。実証タイプのように、”鍼で詰まっているところを通す”ことはしません。身体全体の生命力が高まり、気血が十分に生産され、茶碗からこぼれるように、自然に月経が来るように働きかけるわけです。

〇おさらい(図で説明)



原因による分類・カラクリ3
@虚証
・エネルギー不足で月経が起こらない訳だから、西洋医学的方法により外部から人工的にエネルギーを補充すれば、月経は起こるし虚を補うことも出きるので、一石二鳥のように思える。ただし、育って欲しくないものまで同時に育ってしまうため、不要物が生じることがある。また、体内の生態系が狂うリスクもある。

A実証
・西洋科学的方法で無理に月経を起こさせようとした場合、気血が詰まってエネルギーが出ないところへ更にエネルギーを補充するため、更に詰まりが酷くなり、実が悪化する(詰まって流れない排水口に更に水を流すようなもの)。また、育って欲しくないものまで同時に育ってしまうため、不要物が生じるリスクは虚証タイプよりも高い。当然、体内の生態系が狂うリスクもある。
・西洋科学的方法で無理に月経を起こさせると、身体の自然な排出力が益々失われる→いつまで経っても自分の力で月経を起こさせることができない(悪循環)。

〇(まとめ)
「月経が起こりさえすれば良い」のような発想をして、無理なことを繰り返すことは止めましょう。結果として、体内の生態系に変動が生じたり、いつまで経っても自分の力で月経を起こさせることができない・・・といった常態が悪化する可能性があります。体内の生態系を壊す悪影響は、月経のみならず、他の部分に及ぶことも多く、その場合、すぐには症状として出ないこともあります。数ヶ月〜数年以上先に別な症状として現れることもあります。その場合、月経を起こさせるための無理な方法が原因で、器質的症状が生じたことに気づかない場合も多いのです。本や雑誌で書かれている安易な方法には、注意が必要です。身体の声に耳を傾けながら自己を防衛し、自分の力で月経を起こさせるようにすることが賢明です。

(2008.12記)

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