不妊 改善のための鍼灸をしていて思うこと

〇当方にお来しになる方々は、西洋医学では改善しない症状が主です。これらの方々は、様々な治療を受けたり、漢方薬を服用しても満足いく結果が得られず、”これしか頼るものがない”という思いで、鍼灸の敷居をまたぐパターンが多いです。「どうしても鍼灸で改善してくれよ」というプレッシャーがこちらに伝わってきますので、全力で施術に当たってきたつもりです。思うように改善しない人のことは夢にも出てくるため、夜眠れないことがありました。そのような施術形態をとってまいりますと、「鍼灸とはこういうものなのだ」という認識ができてまいります。つまり、どこへ行っても満足のいく結果を得られない人が、藁(わら)にもすがる思いで、悲痛な叫びとともにやって来る。そのため、こちらも持っている技術・精神力を全て鍼灸施術にかける・・・きれいごとかもしれませんが、それが現状です。

〇しかし、ここへきて不妊の改善を目的とする方が一定割合を占めるようになり、違う様相を呈して来ました。不妊の改善を目的とする方も、他の症状の人々と同様、一般的な治療などに行き詰まり(または、疲れ)、切羽詰(せっぱつま)って悲痛な叫びとともにやって来ることには変わりありません。深刻度でいえば、他の症状の方々と同等でしょう。ただし、他の症状の人と違う点は、女性ホルモン治療によってある程度は改善している点です。つまり、排卵や基礎体温・生理不順はある程度改善して、それなりの形にはなっているが、妊娠に至らない・・・というケースです。

〇若年女性特有の他の症状と比較してみると、生理痛や月経前症候群などに苦しんでいる方々の場合、(鍼灸に来る人は)女性ホルモン治療を受けていないことが多いか、または、過去に受けていても、何らかの理由で女性ホルモン治療を拒否している人が多いです。そのような場合、鍼灸以外の施術や治療は受けていないため、鍼灸が奏功したか否かをハッキリと判断できます。つまり、ゴマカシがききません。「先月は大変な生理痛で仕事を休んだけど、今月は仕事に行けた」「月経前症候群で眠れなかったのが、今回は熟睡できた」などといった場合、鍼灸が効いた事実をハッキリと自覚していただけます。しかし、反対に「いつもと同じように、生理痛で寝て過ごさなければならなかった」「月経前症候群の頭痛がいつもと同じだった」となれば、鍼灸が効かなかった事実がハッキリと露呈してしまいます。

〇こうした客層は他の治療院(特に鍼灸整骨院など)の経営者に言わせると、「きびしいやり方をしているね」となります。他の治療院の場合はどうかといいますと、「効いたか効かないかよく分からないけど、施術を受けた方が良いような気もするし、施術を受けないともっと酷くなると困るから治療院へ行く」「保険が効いて安いし、揉んでもらうと気持ちよいから治療院へ行く」という人も、ある程度存在するのが現状でしょう。

〇不妊の改善を目的とする患者さんが来て下さるようになって、当方においても似たような現象が一部で見られるようになりました。不妊の改善を目的とする人も、他の症状の方々と同様に、切羽詰(せっぱつま)っています。本当に心からお子さんが欲しくて、たいへんな努力をされていることが伝わってきます。ただし、他の症状の患者様と違う点は、女性ホルモン治療という強力なアプローチがすでに存在しているため、鍼灸の効果なのか、ホルモン治療の効果なのかを判断できない、という点が挙げられます。

〇そのため、判断基準をどこに置くかというと、「HPに妊娠率〇%と書いてあるから効くのかな」「〇〇さんが妊娠したから効いているのかもしれない」「西洋医学的説明の方が分かりやすい」「ここなら鍼が痛くないから良い(痛いからイヤだ)」「灸が熱くないから良い(熱いからイヤ)」「料金が安いからこの鍼灸院が良い」(鍼灸はどうせお守りだから・・・)etcという判断基準になります。

〇ずいぶん前に鍼灸師の集まりに出席しました。その中で話題となったのが、「不妊施術は経営が安定する」ということでした。鍼灸の効果をすぐに出せなくても、お客さんが通ってくれるためです。そのかわり、技術よりもそれ以外の要素が大事、ということだそうです。具体的には、耳障(ざわ)りの良い宣伝文句・上品でそれらしい雰囲気・宣伝にたくさんお金を使う・意図的にクチコミで広める・・・などの対策が必要、という話でした。そうしたことを反映して、最近では「不妊」を大々的にうたっている鍼灸治療院は、すごい勢いで増えています。

〇このような施術形態は、「早く、すぐに鍼灸だけで改善してくれよ」といわれ続けてきた小生にとっては奇異なものです。当方としては、不妊のお客様も、他の症状の方々と同様に、真剣に施術しているつもりです。しかし、妊娠希望の方にとっては、”鍼灸はお守り(気休め、癒し)のようなもの”という考えの人も多いため、その分、プレッシャーが軽くてやりやすい反面、暖簾(のれん)に腕押し的なところもあります。

〇施術をしていると、様々な発見があります。「この症状で困っている人は、こんなことをお考えになっているのか」「こんなところでたいへんな思いをしているのだな」など、思いもよらなかった気づきがあります。「お客様が一番の師匠」という言葉がありますが、まさにその通りだと思います。今後とも、小生の一番の師匠としてご指導いただきたいと願う次第です。

(2010.02記)

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